「なにそれ、おいしいの?てか、あたし絶対京次のこと好きになんないよ」
「信じられんのも無理ないだろう。最初は皆そう言う」
あたしが京次から離れて、ふざける。
だけど彼はそれを知ってか知らずか、可憐にスルーして目をを伏せる。
もう穴に入りたい。
あのネタが京次に通じると思ったあたしがバカだった。
彼が鬼だということは、ここであたしだけが知らないのだろう。
『皆』ということは、あたしの前の正妻のだった人たちのことだろうか。
それとも佳たちのことだろうか。
「…佳、さんたちは妾……?」
「そうじゃ」
意味が分からない。
何故こんなあたしが京次の正妻で、彼女たちが妾なのだろう。
『見ようとせぬ者には映らぬ鬼』
彼は自分のことをそう言った。
なら、彼女はただ単に遊ばれているだけの存在っていうことだろうか。
なら、あたしは?
今日、京次と会ったことを思い出す。
足音がした。
誰かがいると思ったから振り向いた。
そしたら京次がいた。
「…………………」
訳が分からない。
あたしがいくら考えても、矛盾していて結論には辿り着かない。
だけどひとつだけ、腑に落ちないことがあった。
さっきは興味ないと言ったが。
「なんで、あたし?葉月も鬼なんじゃないの?」
待ってましたとばかりに、京次が口角を上げた。


