藍白の鬼



食事はここに居る人全員とするのが、この家のしきたりらしい。


広い部屋に集まって黙々と食べる人の人数を数えると、16人。


うち、11人が女。


施設にいた時は男の方が多かったから、少し不思議な感覚だった。


食事を終えると、京次が徐にあたしの方へやってき、あたかも当たり前のように手を取る。


綺麗な女たちがざわついた。


「…なに」


すれ違った時のまま、彼から京次とは話してない。


なんとなく、彼の顔を見ると、ムカついてならないのだ。


もちろん、京次に非があるわけじゃない。


なのに、どうしてか、ムカつく。


敵意剥き出しのあたしを、彼は余裕そうに再び鼻で笑い、あたしの部屋へと足を運んでいく。


「妬いておるのか」


襖を閉めた京次が、何もないあたしの部屋に座っているあたしを見降ろして言う。


「…は?」


あまりにも唐突で、しかもどうしたらそんな思考回路になるのかよく分からず、思い切り訝しめる。


妬く?


あたしが?


京次を?


「なんであたしが妬かなきゃなんないのよ。自意識過剰?」


馬鹿馬鹿しい。


あたしは吐き捨てる。


「ほう…」


だけど京次は、楽しそうにあたしを見ていた。


「儂が言うたこと、覚えておるかの」


「……あたしがセイサイってやつ?」


「そうじゃ」


「……だから、なに?」


イラついた口調で言うあたしに、京次はキョトンとしてあたしを見る。


まるで意表をつかれたように。


「その意味、分からんわけじゃあるまい」


黙って自分を見るあたしに、京次は言いながら視線の高さを合わすように正座する。


いくらあたしが賢くないとはいえ、正妻の意味くらいは知っている。


「何故、聞かぬ」


そうなった理由を何故自分に聞いて取り乱さないのかと、京次は言っている。


あたしは眉を顰めた。


「…興味ない」


親もいない、身を寄せるところもない、友達も少ない。


新年度からは社会人として働かなければいけないのだが、特に生きる理由がないあたしには、それにも興味がない。


そして今日。


突然、正妻になれと言われた。


言われたからなる。


ただ、それだけのこと。