「ね、及川さんって
彼氏とかいたりするの?」
「……へ?」
佐藤くんに
突然話しかけられて
ちょっと戸惑った。
“胡乃葉”は、
男子とは必要がなければ話さない。
「…いないけど…?」
だから、胡乃葉の姿で
男子と接することは
正直したくなかった。
「へー!
めっちゃピュアそうだもんね⁈」
「は…はは…そう?」
思わず作り笑いになってしまう。
和哉が後ろを向いて
微かに肩を上下させていた。
…絶対笑ってる…。
てか、胡乃葉はピュアに見えるんだ?
あたしに話しかけた佐藤くんは
そのまましばらく
ペラペラと喋り続けた。
「でも、
いたこととかあるでしょ?」
美紅に助けてもらおうと
思って視線を送ってみたけど
美紅はすっかり和哉と、
もう1人の男子とで
盛り上がっていた。
勘弁してよ…
「あるよ?」
そう答えたら
すごくびっくりな顔をされた。
…なんか、
はじめて渚の姿を見た時の
和哉みたい。
聞くってことは
いたことあると思ってたんじゃ
ないわけ?
「及川さんって、
ちょっと不思議なとこあるよね」
「…そう?」
昼間は明るいキャラ
つくってたはずなのに……
…この人、
ちょっと苦手かもしれない。
「いつも学年トップでさー!
いつ勉強してんの?」
「あー…うん、家でかな…」
うるさいな…この人……
「及川さんの家ってどのあたり?」
うるさいーーーーー…
「今度、及川さんの家
行ってみたいなーーー」
「だーーめ」
質問攻めのこの男を止めたのは、
美紅たちと話してたはずの
ーーー和哉。

