「…渚?」
唯一あたしの本名を知っているリュウが
あたしに視線を送る。
「え、いっけめーん!!
ナギ知り合い~?」
「知らない」
嘘。
知ってる。
北山和哉(きたやま かずや)
あたしの隣の席のやつ。
学校1の爽やかイケメンの総称付き。
…興味ないけどね。
「じゃ、あたし
喰べちゃってもいいかなぁ~?」
「いいんじゃない?」
七海は北山和哉の元へ
向かった。
あたしたちはそれを見守る。
七海は小柄だけど出るとこは出てる。
スタイル抜群だし、
昔から男慣れしてるから
大抵の男は引っかかる。
でも、
今日は違うみたい。
「なんかナギの名前
聞いてくるんだけど…
知り合いなの?なんなの?」
…マジですか。
「…ごめんね、七海。」
あたしはゆっくりと
北山和哉に近づく。
「…どちら様?」
「何言ってんの?及川だろ?」
「…あたしは渚。もしくはナギ。」
「じゃあ渚ちゃん?」
女の子のように首をかしげてくる。
「…気持ち悪」
「ここじゃなんだから、行こうか?」
行こうか?
なんて
もうあたしの腕を掴んでるくせに。
ちなみにあたしの両手は
パーカーのポケットの中。
引っ張られるようにどこかへ
連れていかれた。

