「あっ、胡乃葉、おはよーっ!」
あたしが教室のドアを開けるなり
いつも明るい笑顔で迎えてくれる。
齋藤美紅。
背が小さくてふわふわの
ショートカット。
どうやって仲良くなったのかは
覚えてないけど、
何かと一緒にいる。
素直で可愛くて、小動物みたいな。
「なんか美紅…テンション高いね?」
「中間テストの結果出てたからさっ、
胡乃葉見た?」
正直、興味ないんだけど。
「見てない…行こっか?」
「うん!」
…テストなんて
どうだっていいじゃん。
…なんて、
口が裂けても裏の自分じゃ
言えないけどね。
廊下の隅にある掲示板に
たくさんの人が群がっていた。
全然見えないしー…
美紅に手を引かれて
どんどん人の間に入っていく。
その途中、何人かの視線を感じた。
「あ、あたし10位だっ!」
美紅が声を上げた。
何気に頭いいの、美紅は。
可愛くて頭いいなんてずるいよね。
「あーっ、胡乃葉1位だ!」
「…ほんとだ」
言われて頭をあげれば
1番上に書かれた自分の名前。
ちらちらと見られていたから
きっと「またあの子だー」みたいな
会話がされていたのだろう。
「もー、毎回で嬉しくないかー」
「そんなことないよ?」
「え~?」
この辺は本心かどうかもわからない。
でも、
こんなあたしが1位なんて
笑えるね。

