朝、目が覚めたら
隣に知らない男のヒトが
裸で寝ているのにも、
もう慣れた。
「顔は微妙だけど…なかなか…」
腰に回されていた男の両手をほどいて
するりとベッドから抜け出した。
「またね」
男が起きないうちに
服を着て部屋を出る。
明け方。
行く先は5つ上のお兄ちゃんの家。
…お兄ちゃんだけの家。
お母さんとお父さんは…
どこかにはいるんじゃないかな。
地球のどこかには。
もう、
顔もぼんやりとしか
思い出せないくらいになった。
―――ガチャ
あるマンションのドアを開け、
玄関に入るとすぐに
鼻をつくお酒の匂い。
ここにいるだけで
酔ってしまいそうなほど。
早足で洗濯機のある部屋に行って、
洗濯の終わっているワイシャツと下着と靴下を
中から引っ張り出し、
代わりに今まで着ていたものを
放り込む。

