「ごめんな…渚」
「…なんで?」
謝る理由がわからない。
なにも言わずに悲しそうに俯くから
「カズらしくない」って、
そんなことしか言えなくて。
「後にも先にも渚にしか
話せねぇことだな…」
そこに特別な意味もきっとないのに、
あたしはカズを前から抱きしめた。
体格差的に、
すっぽり…とはいかなかったけど。
自分でも自分の行動に驚いた。
「…どうしても
あたしはカズの味方でありたい」
寝言であたしの名前を呼んでいた。
どんな夢を見ていたのか
わからないけど
「…カズのこと、…」
好き、と言いかけてやめた。
言ったってどうなることでもない。
カズにとって沙耶さんが1番で、
これから家を継ごうとしてるのに
あたしみたいなのがひっついてたら、
またカズが苦しむだけ。

