そんなとき、
親からお見合いの話があった。
お見合いだ?冗談じゃない。
こんなご時世にそんなもん
あってたまるかってんだ。
病気の彼女…沙耶(さや)のことを話せば
反対されることはわかってた。
だから、駆け引きにでた。
沙耶とのことを許してくれないなら
家は継がない。
沙耶とのことを許してくれるなら
家を継ぐために努力する。
みんな、声を揃えて言うんだ。
“ふざけるな”と。
それから
俺は家に帰らなくなった。
沙耶の担当医は
あのおじさんだったんだ。
おじさんは俺に何も言わないでくれた。
でも
沙耶の症状はどんどん悪化した。

