大好きなのは貴方の×××(仮)



追いかけたかったけど
美紅がいたからできなかった。


その日の深夜

美紅と別れたあとに
クリスマスツリーの前にきてみた。

朝までライトアップは
続くらしいが
さすがに人は少なくなっていた。


「…」

どうでもよかったはずなのに。

他人なんて関係ないはずなのに。


「カズ…………」


その人も同じように
ツリーをひとりで見上げていた。

「すげーよな、これ。
おネーサンもそう思うでしょ?」


「…」

なんで他人のフリなんかしてるの…


「……カズ…でしょ」

「んー…」

ぽりぽりと頭をかく姿からは
前は不良みたいなオーラだったとは
想像できない。


「そんなに俺に会いたかったわけ?」


「は…」


「渚、おいで?」


また、だ。
この人には逆らえない…


ぎゅ…


カズの体温と大きさとが
心地いい。


「前から思ってたけど
渚って抱きごこちいいよね」

「なに…言って…」

「渚だって、スキだろ?」

「…別に」


お見通し。
こんなこと言ったって
カズにはわかってんだ。

「嘘つきだな」

そう言ってふっと笑われるのも
嫌じゃなくて…

あたしもカズの背中に
手を回した。


クリスマスだから
こんなあたしたちに
気に留める人もいない。


「飛鳥たちが探してた」

「うん」

「医者のおじさん、亡くなった」

「うん」

「こっちに…戻ってこないの…?」

「…」


「…あたしも、カズのこと
探してたよ…」


ふいに落とされる甘いキス。

なんで、そんなことするの…
カズのことはあたしには
わからないよ…