建物と建物の間の路地。
数人がたまっていた。
「…!」
一瞬、目があった気がした。
教室の明るい及川じゃなくて
黒猫のほうだった。
及川の隣にいた女が
俺に話しかけてきた。
胸もそれなりにあるし、
顔も悪くなかった。
男としての欲が働いたが、
それよりも。
「…あいつは…」
「あいつ〜?
ナギのこと言ってる?」
「ナギ…?」
胡乃葉、だろ…?
それから
及川であることがはっきりして
俺は何も考えずに連れて行った。
…それからのことは
あまり覚えていないけど
混乱と興味とで、
俺は揺れていた。
俺が知った“渚”は、
胡乃葉とはまるで別人だったが、
図書館などで
見ていたからか
違和感なく、むしろ
こっちが素なんだと自然と
理解した。

