翌日の登校時間。

俺は腐れ縁の筒井 大地(ツツイ ダイチ)と廊下で並び、言葉を交わしていた。


「まさかクラスメートで知らない奴がいたとは……」
「律樹が女しか見えてないからじゃね?」
「いやいや。いくら俺でもクラスメートの男ぐらい覚えてるって。」
「でも実際、いたんでしょ?知らない奴。」
「まーな……」


昨日のアイツ……


思い出すと腹が立つ!!


遊んでばっかの奴は嫌いだと?
だからってあの態度はねーだろ!

絶対文句言ってやる!!



「律樹?」
「あ?」
「いや、顔怖ぇーよ。」


大地が若干頬をひきつらせる。


「律樹ー!」


高いキーの声に名前を呼ばれ、大地から視線を外すと、一人の女子生徒が駆け寄ってきた。


長い艶のある黒髪に、くっきりした目鼻立ち。


確か他クラスの……


「奈美恵(ナミエ)じゃん。どした?」
「律樹が遊び相手探してるって美穂(ミホ)が言ってたからさ。今度は私と遊んでよ。」


美穂って昨日の女か…。


「んー、別にいいけ――あぁ!」


奈美恵の肩越しに、廊下を歩く昨日の男子生徒を見つけた。


「大地!アイツだ!!お前の情報力なら名前ぐらい知ってるだろ?」


俺が指差した方を数秒見て、大地は“ああ”と声を出した。



「知ってるよ。名前は確か和泉 景(イズミ ケイ)」
「和泉 景だな!」


忘れてたまるかと頭にしっかり刻み込む。


そんな俺を奈美恵は不思議そうに見ていた。


「なんだよ?」
「律樹が男に興味持つなんて珍しいなと思って。友達って言ったら大地ぐらいじゃない。」


確かに俺は同性に嫌われるタイプだから、友達って呼べる奴は少ない。


「アイツはちげーよ。友達になりたいから興味持ったんじゃない。」
「ふーん。どうでもいいけど、ちゃんと考えておいてね。いい返事待ってる。」


奈美恵はそう言って走り去っていった。

ちょうど始業を知らせるチャイムが鳴り、俺と大地も各々の教室に入っていった。