道中、お互いを名前で呼びあうことに決定した。
サクラと呼ぶのはなんとなく気が引けたから、吉永さんと言うと笑いながら却下された。
「どこ行くの?」
俺はサクラのかけている予備の眼鏡を見ながら自分の眼を指差した。
一瞬、彼女の顔に影が帯びた気がしたが、すぐにあぁ、そっかという表情に変わった。
「ユイは好きな人とかいないの?」
そういえばのような口調で、自分に合いそうな眼鏡を探しながら言った。
急に訊かれて焦ったが、大して焦るほどのことでもなかった。
「いやー、いないよ」
そう答えておけば大体の人は納得する。
それでも納得しない人は“ウソだろー”と言って追及してくる。
彼女は“ふーん”といった顔をした。
俺は逆に訊いてみた。
「サクラは?」
「そうだねー。いるよ」
それを耳にした時、残念な気持ちになった。
理由は多分わかっていた。次に続く言葉がそれを物語る。
「いや、いた。かな?」
ホッと安堵の息がもれる。“ふーん”という顔はできなかった。
「私ね、昔イジメられてたんだ」
まるで笑い話をするかのように話し始めた。
サクラと呼ぶのはなんとなく気が引けたから、吉永さんと言うと笑いながら却下された。
「どこ行くの?」
俺はサクラのかけている予備の眼鏡を見ながら自分の眼を指差した。
一瞬、彼女の顔に影が帯びた気がしたが、すぐにあぁ、そっかという表情に変わった。
「ユイは好きな人とかいないの?」
そういえばのような口調で、自分に合いそうな眼鏡を探しながら言った。
急に訊かれて焦ったが、大して焦るほどのことでもなかった。
「いやー、いないよ」
そう答えておけば大体の人は納得する。
それでも納得しない人は“ウソだろー”と言って追及してくる。
彼女は“ふーん”といった顔をした。
俺は逆に訊いてみた。
「サクラは?」
「そうだねー。いるよ」
それを耳にした時、残念な気持ちになった。
理由は多分わかっていた。次に続く言葉がそれを物語る。
「いや、いた。かな?」
ホッと安堵の息がもれる。“ふーん”という顔はできなかった。
「私ね、昔イジメられてたんだ」
まるで笑い話をするかのように話し始めた。

