ガッ!!!



鈍い音をさせて、至の身体がぐらりと揺れた。



「…な!?」



少年が支えるよりも早く、何者かの腕が傾いだ至を支えた。


それは至の後頭部に手刀を叩きこんだ手で―――




「少し目を放した隙に……またコイツは……」




唸るような声は呪詛のように低く。


至を見下ろす双眸は冷静ながらも絶対零度の殺意に満ちていた。


事の成り行きに唖然としている間にも、男はさっさと至を抱き上げ立ち上がっていた。



「お…おい。ちょ…待てや。」




戸惑い勝ちの声に男が肩越しにチラリと振り返る。




「そこの小さいのも助けたいなら運びなよ。」




早くしないと今度こそ手遅れになるよ、と。


そう言った男に先ほど見た殺意の類はなく―――。





それだけ言い捨てて男は歩き出し、背後から掛けられた声に再び足を止めた。