「医者がどんなに手ぇ尽くしたって、人間は最終的に死ぬで。」
それなりに長いニンゲンの歴史の中、それこそ数えられないほどのニンゲンが生まれ―――そして死んでいる。
世界をひっくり返す傲慢なエゴイストも、文明を発展させた偉大な発明家でさえも。
誰一人、たった一人たりともこの結果を覆せない。
医者として手を尽くし、その一回、患者から死を回避させたとしても―――その先で必ず死ぬ。
それはまるで死神とのチェスゲーム。
プレイヤーは死神と患者。
だとしたら医者は患者のセコンドか。
時に後ろから指南してやり、チェックメイトを回避させる。
だが、どんなことをしても何をもってしても、死神とのそのゲームに勝利した者はいない。
未だかつて誰一人。
医者としての助言はゲームの時間を僅かに引き延ばすだけのコト。