そもそも違法の魔窟医師。


保険など当然利くはずもなく、治療費は真っ当な病院より高額。


だが、金さえ払えば“どんな”治療でもする。


そして老婆は魔窟の魔女と歌われるに相応しく。


その外見に相まって、その医術は魔法と揶揄されるぐらいに長けていた。


その腕に縋る患者は五万といれど、老婆はその足元を見て治療費を踏んだくる。


ぼったくりキャバクラよりも性質が悪い。


そんな事実と共に、その言葉は少年に対する嫌味、もしくは辛辣な釘であろう。



医者は教師でも教祖でもない。






治療を施すのが医者であり、患者に人生を説くのは立場違いだ―――と。




理解してしまったから。

少年は渋々ながらも治療した。




いっそ潔く死んでしまえ、という内心の不満を余所に、その治療は手際よく的確。


それは一流と認めるほどに成長した少年の医者としてのなけなしのプライドだ。


このまま指示通り安静にしておけば、最終的に皺かと思う程度の跡しか残るまい。





今後の処置を伝えて女を帰した。