それを動かしたのは今しがた治療室に姿を現した人物。



『何をしとるか、虎の。さっさと治療せんかね。』



少年はギロリと老婆を睨んだ。




『だって、ババァ――――』


これ自傷やで。




女は違うと言ったが、医者のはしくれであればそれが他傷か自傷かくらいの見分けは付く。


腕の内側に幾つも付いた傷は所謂、躊躇い傷。


その一つ、肘の内側近くにあるものが静脈を裂いたのだ。







自殺を肯定するわけではないが、生きていればさまざまな事情がある。


その挙句に死を選ぶ輩がいようとも、それは致し方のナイ事だ。


その者の生き方に…選択に…口を出すほど傲慢ではない。





――――だが。