事実、『魔窟』で一流の医師と名を馳せているのは目の前の老婆。


魔窟の魔女。


少年の祖母だ。


その学僕として、助手としてこれまで医療に携わってきた少年は血筋なのか、名こそ通ってないまでも、中々の腕前を持っていた。





鍋に箸を伸ばしながら少年はゾンザイに続けた。



「なぁババァ。人間に治療って必要なんかいな。」



それに応(いら)えはなく、ずぞぞ……と汁を啜る音が響く。




「その心は?」



不意に問われて少年は脳裏に夕刻のあの女を思い浮かべた。