(二)
骨と皮ばかりの細い手が鍋にパラパラと青物を落とした。
ぐつ…ぐつ…と煮え滾る液体にそれを沈めるように菜箸で突く。
部屋の明かりは弱く、コンロの炎が下から老婆の顔を闇に映す。
寄る年波に深くなった皺、ギョロ付いた双眸に鷲鼻。
最後にぐるりと奥底まで掻き雑ぜて、老婆は出来合いに満足そうに口端を歪め、火を止めた。
「おい。ババァ。」
背後から掛けられた声に小さな老婆は鍋を持って振り返った。
「ぉぉよ、虎スケ。ぬしも食うか。丁度出来たトコロだ。」
簡素な木のテーブルに…ゴトリ、と置かれた鍋にはアツアツの煮込みラーメン。
仕上げに入れた刻みネギの半生具合も絶妙だ。
……てか、歳考えよーぜババァ。
夜食にラーメンはナシだろう。
いっそ怪しげな魔法薬でも煎じていた方が絵的に似合う。

