足掻きもしない身体は波の無い鼠色の水に一度沈み、プカリと浮いた。
かぷ…かぷかぷ……
女の周りで一つ泡が立ち
かぷかぷかぷかぷかぷかぷ
続いて水面は勢いよく騒ぎ出した。
大食漢の鯉達だ。
違法な廃棄汚水の所為でか奇形腫も多く、体は本来の倍近くに育っている。
しかしながら口周りは発達しなかったようで、入れ歯を忘れた老人みたいな口をパクパク動かすだけで、肉を食いちぎる力はない。
「……シクッた。」
切り刻んで投げ込むべきだったか。
おぞましく奇怪な沼の住人共が女の体を舐め回し蹂躙する光景を、少年はぼんやりといつまでも見続けた。

