(二)
暗い瞳をして語る少年に鈴木虎之助はただただ溜息を零した。
喧嘩に弱いクセに修羅場に飛びこみ、気弱な顔をして情に強(こわ)い。
“アナタも僕も自分がしてあげられる事をしているだけです”
今言われた言葉を反芻し、無意識に自嘲気味な笑いが込上げた。
「他人に『してあげられる事』が、他人の『望む事』とは限らへん……」
スズキの言葉に彼が「え?」と不思議そうな顔を上げる。
スズキは首を振って取り留めのない思考を払拭し、改めて彼に向き直った。
「例えば、せやな……さっき自分が『助けた』ヤツ。アイツは本マに助けられたい思うとったかな。あんなんアイツにとっちゃ日常茶飯事で今更誰に助けなんか求めてなかったんちゃうけ。」
「それは……でも、それは……」
諦めたから、で、本心は助けてもらいたかったと?
「ホンマか?少なくともオマエにだきゃ助けられたかナイっちゅーんが、本心やったりな?」
ギクリと肩を跳ねあげた彼をスズキは真っ向見詰めた。
「わぃでも聞ぃとるで自分の噂。―――『死に至る』」
その忌み名に彼の顔からはスぅッと血が引いていった。

