「自分マゾか。強ぇならともかく弱ぇくせに修羅場に飛びこむなや。」
至はグッと奥歯を噛み締めて視線を落とした。
さっきの場面を彼にみられていたらしい。
彼の言う事は尤もで、スーパーマンでもない至が自ら怪我を負ってまでして修羅場に飛びこむのは自殺行為―――
それは単なる偽善と傲慢なのかもしれない。
でも―――
「助けられるのに、助けようとしないのは……人として裏切りじゃないですか?」
ばんそうこうを貼る手が僅かに止まった。
が、直ぐにまた淀みなく動き出した。
「裏切りやとしても構へんわ。みんな自分が一番かわええんじゃ。」
わぃかてそーや。と言った少年を至は見上げた。
「だけど……アナタは今、こうして助けてくれてます、よね。自分の出来る事で僕を助けてくれている。」
「ソーデスネ。そやけどわぃのとオマエのじゃ話が違うやろ。治療はしてやってもわぃにリスクないやんけ。」
「……同じです。アナタも僕も自分がしてあげられる事をしているだけです。」
「自分分からんちんやなー。」
少年は呆れたように溜息を吐いた。

