程なくして辿り着いたのはグラウンドの片隅。


至(イタル)はただただ目の前の出来事を理解出来ずに立ち尽くしていた。


何が癇に障るものか知らないが殴るものとばかり思い込んでいたその相手は、水道で濡らしたタオルを至に差し出してきた。





動かない至に少年が顔を顰める。



「ナニぼさっとしてんねん。はよ拭けや。」



それでも動かない至に業を煮やしたように少年が動きだす。



「ぇ……ちょっ…!」



待ってという隙もなく、米神に垂れた血から目立つ血糊を手早く拭き取って行く。


優しいという手つきでもないが、乱暴さはない。


それを終えた少年は鞄から消毒液と脱脂綿を取りだした。


消毒液に濡らした脱脂綿で傷を拭き、ばんそうこうで傷を覆っていく。