「や、今日は有給休暇っす。」
「ああ…」
そぉ、と感慨もない返事。
「金いっすか?」
「あー、はい……」
言われて手をポケットに突っ込み無造作に入れた札の束を取りだした。
「じゃこれで後はよろし――――」
言葉が尻切れになった。
金を受け取るハズの手がナイフを握り、彼に一直線に向かってきたから。
一mを切る接近戦。
しかも不意打ち。
勝敗は確信的だった。
―――シトメタ
少年がそう思ったのは無理からぬ事。
だが、鋭い切っ先が彼に触れようとした刹那、その標的はスルリと消えた。
え?
瞠目する少年の目命一杯に映りこんだのは
「同業者ではナイ…ぽいんだけど。」
裡を探るように覗きこむ彼であった。