カッ―――
と鋭い音がして、スズキが左目の高さにあげたカップに罅が奔り真っ二つに割れた。
摂理に従い取っ手の反対側半分と共に中身が飛散し、スズキが僅かに眉を顰める。
「…あ゛づぃ」
「NO――――!!アッシの愛は眼球抉ってぐりんぐりんするぐらいデカイんすから、んなチンケな火傷なんか負わないでくださいよーっ。」
……理不尽な。
本名を名乗らないのは、
真実の名がないからなのか。
縛られないためか。
簡単にフルネームを明かすのは、
それが真実の名ではないからか。
名ごときに縛れる一切を持ち合わせていないからか。
真実はそれぞれの胸にのみ。