「俺が呼ぶスズキは君以外にないし、君が呼ぶスズキは俺でしかないから。」


俺は自分をスズキとは呼ばないもの。と。





自分を名前呼びする輩もいない事はないが、名前はあくまで他人の為のラベルなのだから。




途端、彼女は吠えた。


獣の咆哮の如くに、天に向かって命一杯。



「なんすかそれっ!?まさに二人だけの世界的な!!世界は二人の為に、OLL貸し切り、愛の大富豪っすよ。チョーやべぇ!!」



や、単なる現実的結論―――


言おうとした言葉はついぞ口に出なかった。


何故なら、感極まった彼女が飛び付いてきたから。


レモンを切るために用意された果物ナイフ片手に。