スズキはじぃっと皿のモノを見詰めたまま、動く気配はない。
「ささ。どーぞ!料理に薬を仕込むなんっつー陳腐な暗殺は考えとりませんからぁ~。」
いや、食欲減退の原因は明らかソコより歌の所為……
スズキは内心そう思いつつものろりとフォークを手に取った。
毒薬。
彼女が入れてナイと言うからには入ってないのだろう。
尤もその言葉に信用はないが。
彼女の手料理を食べるのは何もコレがハジメテではなく、やる気であればとっくに逝っている。
以前に、彼女の言通り、彼女の言動を知る限り暗殺は考えてナイと見える。
まぁ、コロス気であるなら殺せばいい。
死ぬ気概はないが、生きる気概があるわけでもなし。
死ぬならそれまでの人生と諦観はある。
果然、口に入れたスクランブルエッグは彼女の言葉通り……
「…油と卵の味“のみ”……」
「えぇっ!まさかの愛情スパイス足りない系!?」
「…寧ろここは素直に塩コショウで…」
醤油も可…と洩らして、その時には自ら醤油に手を伸ばしスクランブルエッグに垂らしていた。
「あ~、スズキさんは目玉焼きに醤油派っすか。」
「俺が今食ってんのスクランブルエッグだけどね……」