「ともかく契約は破棄の方向で。つか、清々しく諦めたほーがよござんすざんすー。この人をヤルならアタシが壊しやすよ。」
電話に向けられたその言葉に彼はハジメテ興味を持ったようにチラリと彼女に視線を向けた。
彼女はその視線を気にする風もなく電話先の相手に言った。
「この人をヤルのは誰の命令でもなくアタシの愛のみっす。アタシの溢れんばかりの愛情でぎったんぎったんに切り刻み、世界を阿鼻叫喚に陥れる程の恋の烈火で火達磨にしますんでー。アタシの愛の邪魔するヤツ等は地獄みせまっせ。」
…どうしたもんか。
ツッコミドコロが満載過ぎる。
彼はお手上げとばかりにテレビに意識を戻した。
彼女は彼に差し向けられた刺客である。
部屋に訪れる者があるとすればそれ以外にないもので。
ちょっとダケ意外だと思った事があるとすれば、それが『子供といわれる歳頃』に見える『女』だった事だ。
尤も実年齢など見た目で計れるものではなく、女性の同業者も希少といえども皆無なワケではないので、ちょっとダケ。
ココまでの経緯で彼が一番ビックラなのは、刺客であるはずの彼女が電話先に熱く語った一目惚れらしき心情で。