不思議男が向かったのは、そこから幾許もナイ所に存在する部屋の一つ。
暗い深海を思わせる通路を抜け現れた 朽ちて、崩れかけた扉。
一同は中に踏み込み驚愕した。
外からは想像もつかないほどに簡素で清潔な空間が広がっていた。
そして最新鋭と思われる医療機器の数々。
よもやナンデモ強盗といえども、こんな場所にこんな高額な宝が鎮座しているなどとは夢にも思わないだろう。
キツネかタヌキに化かされているかのような心境である。
男の指示で至と男の子が診察台に横たえられた。
『―――さて、ソッチの子供には興味はナイ。生かしたくば君が生かしたまえよ。』
男にそう言われて、男の子の執刀は少年がする事になった。
とはいえこれまで助手としての経験しかなく、これほどの重傷患者のオペを一人でするなど荷が重い。
猫の手でも借りたい心境だが、残りのスズキ二人に手を借りるなんて以ての外。
助かるモノも助かりゃしねぇ。
しかし不安は杞憂に終わった。