お嬢様になりました。

もう目の前の男を怒鳴る気力なんてなかった。



「……ゆでダコ」

「なっ!?」

「いい暇潰しが出来た」



いい暇潰し!?


こいつ……ッッ!!


また私の中で怒りがふつふつとこみ上げてきた。


やっぱり文句の一つでも言ってやろうと口を開こうとした時、私よりも先に玲が口を開いた。



「またな」

「…………」



そう言うと玲は私に背を向け歩いて行ってしまった。


スッと伸びた背筋にしなやかな足どり。


玲の姿が見えなくなっても私は視線をずらす事が出来なかった。


ズルい……ずっと涼しい顔してたくせに最後に笑うなんて……。


あんな事されたのに、たったそれだけの事で私は何も言えなくなってしまった。


美形は得だ。


……あれ?


ちょっと待って!!


こんなムードもへったくれもない中私のファーストキス終わっちゃったの!?


しかも彼氏でも何でもない奴と!?



「嘘でしょ……マジありえなぁぁぁいッッ!!」



私はショックのあまり愕然とその場に暫くの間立ち尽くしていた。