居間に入るとお祖父ちゃんはソファーに深く腰掛けて目を瞑っていた。


膝の上にのったお祖父ちゃんの指はリズム良くトンットンッと動いている。


回っているレコードから流れる音楽。


その音楽に気持ち良さそうに聴き入っているお祖父ちゃん。


私が目の前のソファーに腰掛けても、お祖父ちゃんは気付かない。



「出直した方がいい?」



声を掛けると目を見開き驚いた顔をするお祖父ちゃん。


その動きが可愛くて、ついつい笑ってしまった。



「すまない。 ワシから呼んでおきながら、つい音楽に聴き入っておった」

「ううん。 着替えたり何だりしてて遅くなっちゃった。 ごめんね」



お祖父ちゃんは優しく微笑むとカップに手を伸ばし、紅茶を一口飲んだ。



「学校はどうじゃった?」

「初日で疲れたけど、楽しかったよ。 友達も出来たんだ」

「そうかそうか。 もう友達が出来たのか。 困った事はなかったか?」

「うん。 今のところ問題ないよ」



言えるわけない。


ここまで良くしてもらってるのに、初日から揉めたなんて……。


お祖父ちゃんに心配かけるわけにはいかないから、今後はあいつと関わらないようにしよう。