お嬢様になりました。

「お前もさっさと帰……ッ!? おまっ、な、何泣いてんだよ!!」



私の顔を見るなりギョッとなり、動揺する隆輝。


隆輝の手が私の腕を優しく掴み、部屋の中に引っ張り込んだ。


後ろでドアが閉まる音がして、隆輝は困った様な顔をして頭をクシャクシャかいた。


隆輝は背を向け歩き始めた。


その時見えた背中の痛々しい傷痕に息を呑んだ。


涙が溢れ、次々と頬を伝い流れ落ちていく。


私は隆輝の背中にくっつき、お腹に腕を回した。



「お、おいっ!! おまっ何やって……」

「ごめんっ!! ごめん……隆輝……っ」



お互い黙り込み、部屋の中は静寂に包み込まれた。


『それから、あの日葵を助けたのは、海堂だよ』……観覧車から降りた玲は、確かにそう言った。


あの時、玲が何を言ってるのか一瞬理解出来なかった。



「助けに来てくれたの、玲じゃなかったんだね……」

「……あぁ」



私の涙が隆輝の背中を伝って落ちていく。


引き締まった背中は温かかった。


頬から感じる温もりが、身体中に染み渡っていく。



「何で、言ってくれなかったの?」

「東條に助けられたって言った方が、お前が喜ぶと思ったんだよ。 だから、この事を知ってる人には口裏を合わせてもらう様頼んだ」

「バカ隆輝……」



そんな理由の為に嘘つくなんて、本当にバカ。


隆輝のお腹に回した腕に少し力を入れ、更にギュッと隆輝に抱きついた。