お嬢様になりました。

隆輝の泊まっている部屋のドアの前まで来たはいいが、どうする事も出来ず佇んでいる。


どうしよう……。


一言目に何て言えばいいの?


久しぶり?


元気?


……どれもベタ過ぎる。


本当は仕事じゃなくて、ゆっくり過ごす為に学校を休んでいた隆輝に、どういう顔で会っていいかも分からなかった。


けど、ここまできて引き返すのも嫌だ。


でも……不安な気持ちのせいか、体が重くていう事を聞かない。


胸を膨らまし、肩を上げ、息を吐き出し肩を下ろす。


そうやって何度も何度も深呼吸をした。


よしっ!!


ーガチャ……。


気合を入れた時、目の前のドアがゆっくりと開いた。


部屋の中から現れたのは、黒髪ロングの美女だった。



「…………」

「…………」



私も相手も目を合わせたまま固まってしまった。


この人、誰……?


部屋間違えたかな?


ううん、そんなはずない。


バカみたいに何度も部屋の番号確認したもん。


もしかして隆輝の……彼女?


あの隆輝が部屋に入れるくらいだもん。


きっとそうだ。


グッと奥歯を噛み締めていると、美女の肩越しに隆輝の姿が見えた。



「りゅ、うき……」



届くはずのない小さな呟き。


だけど私の声が届いたかの様に、隆輝がこちらに顔を向けた。