お嬢様になりました。

まだ皆は知らないんだ。


私が隆輝との婚約を解消した事。


お祖父ちゃんには話してくれたのかな?


でもお祖父ちゃんからその事について何も触れられないから、お祖父ちゃんにもまだ話してくれてないのかもしれない。


お祖父ちゃんに確認すれば早いんだけど、荒木さんの事で少しギクシャクしてるし、もしもまだ話しをしてないなら、隆輝との今の関係を知られたくない。


私は隆輝と婚約者でいたい……今ならそう素直に思える。


こんな事を言っても、今更隆輝の気持ちは変わらないかもしれないな……。



「葵お嬢様、お疲れ様でございます」



内藤さんが和かな顔で声を掛けて来た。


本当、いい人なんだよね。



「内藤さん、ごめんなさい。 せっかく迎えに来てもらったんですけど、今日は玲と一緒に帰るので、先に帰っててもらえますか?」

「ですが……」

「心配しなくても、遅くならないように送り届ける。 それならいいだろ?」

「畏まりました。 それでは東條様、葵お嬢様の事を宜しくお願い致します」



内藤さんは少し心配そうな顔をしながらも、私たちが乗った車が動き始めるまで頭を下げてそのまま見送ってくれた。