お嬢様になりました。

ここのお家の人たちは、何も知らない私に色んな事を教えてくれた。


その中でも荒木さんはいつも傍に居てくれて、分からない事があると何でも教えてくれた。


それでもまだまだ知らないことばかり。


教えてもらいたい事はたくさんある。


それなのに荒木さんは居ない。



「私はまだ執事として経験が浅く、正直浅賀さんや荒木さんの足元にも及びません。 それでも、早くお二人に追いつける様頑張りますので、宜しくお願い致します」



今の私には言い辛い事だっただろうに、内藤さんは迷いのない真っ直ぐとした目で挨拶をしてくれた。


いい人、なんだろうな。



「こちらこそ、宜しくお願いします」

「あ、葵お嬢様っ」



座ったまま頭を下げると、内藤さんの慌てた声が降ってきた。



「私の様な使用人に頭を下げてはなりませんっ」

「これからお世話になるんですから、挨拶はしっかりしておきたいんです」



そう言いながらも、荒木さんに戻ってきてほしいという気持ちは無くならなかった。



「ご馳走様でした。 私お風呂に入ってきます」

「お食事は摂られないのですか!?」

「食欲がないんです」



そう内藤さんに告げ、私は早々に部屋を出た。