玲のシャツの胸元が濡れていく。


細身だけど、硬くて逞しい体に安心を覚えた。


泣き続ける私の体を抱きしめ、背中をずっと摩ってくれる玲。


色んな思いや出来事が、忙しなく頭の中を駆け巡る。


そんな時ハッとなった。



「玲……」

「ん?」



玲の顔を見上げると、玲が少し首を傾げた。



「助けに来てくれたのって……玲?」



あの時は意識が朦朧としていて、誰なのかよく分からなかった。


でも男性だった事は間違いないと思う。



「そうだよ。 無事で良かった」

「玲が……あり、がと……っ」

「……いいんだ。 遅くなってごめん……怖かったよね」



私は首を横にふった。


怖かったけど、助けに来てくれた。



「っ……玲、背中……」

「背中?」

「怪我ッ……だって真っ赤にっ」



玲は再び私の体をギュッと抱きしめた。


そして私の顔は玲の胸に埋められた。



「対した事ないよ。 擦り傷だよ」

「でもっ……」

「出血の割に傷は浅かったから、どうってことない。 葵がこうして腕の中にいてくれる事が幸せなんだ。 だから気にしないでほしい」



止まった筈の涙がまた溢れ出す。


私のせいで玲を傷付けた。