お嬢様になりました。

ーコンコンコン。


華達が帰って静かな病室に一人で居ると、ドアをノックされた。



「はぁい」

「俺だけど、入ってもいい?」



玲……。


仕事で忙しいのに来てくれたんだ。



「どうぞ」



ドアが開くと玲じゃなくて、大きな花束が現れた。


綺麗な花束に見惚れていると、その横からひょっこりと玲が顔を見せた。



「そんな顔しないでよ」

「そんな顔? 普段と変わらないよ」



思わず苦笑いが漏れた。


そんな暗い顔して普段と変わらないなんて通用しないよ。


玲は花束をテーブルの上にのせ、ベッド脇の椅子に腰掛けた。



「お花ありがとう」

「いいんだ。 身体の具合は?」

「対した事ないよ。 暴行されたわけじゃないし、薬も睡眠薬だったみたいだから」

「体に傷はなくても、心が傷を負ってる」



玲の労わる様な澄んだ瞳に見つめられ、涙が込み上げてくるのを口をグッと結び我慢した。


本当はまだ怖くて堪らない。


携帯が鳴る度にドキッとする。


それに唇にあの男の感触が残ってる。



「泣くのが一番だよ」

「でもっ……」



声が震える。


玲は立ち上がりベッドに腰掛けると、遠慮がちに私の体を抱きしめた。