お嬢様になりました。

「どうして私の事、宝生院だと思ったんですか?」

「鳳学園の制服を着用されているお嬢様とお伺い致しましたので、宝生院様ではと思いお声を掛けさせて頂きました」



そういう事か。


こんな老舗のデパートを制服で彷徨いてる人なんて、あんまり居ないよね。


浜崎さんはにこやかな顔をして、上品に手を上げ通路の向こう側を指した。



「お車までご案内致します」

「……ありがとうございます」



深読みし過ぎ、か……。


奴は絶対現れると思ったんだけど、またの機会を待つしかない。


私は肩を落としつつも、浜崎さんから離れない様後ろについて歩いた。


歩いていてふと違和感を感じた。


出口に向かってるよね?


どんどんデパートの奥に進んで行ってる気がする。



「あ、あの……やっぱりご迷惑でしょうし、私一人で戻ります」



浜崎さんはゆっくり振り返り、ニコッと微笑んだ。



「失礼致します」

「え?」



浜崎さんは耳に携帯を押し当て口を開いた。



「はい、今宝生院様とご一緒でございます」



電話の相手は分からないけど、話の内容的に電話の相手も私の事を探してくれてたのかな?


もしかして私が中々戻らないからって大事になってる!?



「お約束の場所におります」



約束の場所?


何言って……っ!?


突然隣の非常口の扉が開き、鼻と口を布の様な物で塞がれた。



「んっ……ッッ」



幾ら暴れても後ろから私の体を締め付けている腕は、ビクともしなかった。


段々と視界はぼやけていき、瞼が重たくなってきた。


薄れ行く意識の中、最後に見えたのは不気味な程和かな笑みを浮かべて、私を見下ろす浜崎さんの顔だった。