お嬢様になりました。

デパートの前で乗っている車がゆっくり停車した。


ドアが開き、外に出ると歩いている人たちの視線を感じた。


最初はこの視線に慣れなくて、穴があったら入りたいと思うくらい恥ずかしかったのに、今では何も感じなくなった。



「荒木さんは車で待ってて下さい」

「いいえ、私もお供致します」

「直ぐ終わりますから、車にいて下さい」

「葵お嬢様に何かあってからでは遅いと、以前お話をさせて頂いた筈です」



荒木さんは眈々としている様で、声はどこか有無を言わせない強い口調の様にも感じた。


無表情で抑揚のない声。


それでも少しは荒木さんの感情が分かるのは、荒木さんがいつも私の側にいてくれるからだろうな。



「お手洗いに行くだけですっ!! もうっ、言わせないで下さいっ!!」



頬を膨らまし荒木さんを見上げると、荒木さんは珍しく驚いた顔をしていた。


今のうちだと思った私は、逃げる様に走ってデパートの中に入った。


ちょっとわざとらしかったかな?


別にトイレに行きたいわけじゃなかったけど、私はとにかく急いだ。


万が一追いかけてきた荒木さんに直ぐ見つかってしまわないよう、三階の女子トイレに向かった。