お嬢様になりました。

困惑していると、隣から小さな笑い声が聞こえた。



「あまり深くお考えにならず、私たちにとって葵お嬢様というのは貴女様の愛称、とでもお思い下さい」

「愛称、ですか?」

「はい」



随分無理矢理な言い分。


でも私がいくら喚いても相手は折れてくれなさそう。



「……分かりました」

「ありがとうございます。 では、葵お嬢様にご挨拶をお願いします」



浅賀さんに言われ、黒髪の女性が口を開いた。



「私、宝生院家でメイド長を務めております、丸井と申します。 どうぞ宜しくお願い申し上げます」

「よ、宜しくお願いしますっ」



ニッコリ微笑むメイド長の丸井さんは年齢不詳だ。


でも絶対に聞ける雰囲気じゃない。



「では参りましょうか」

「はい」



私は沢山のメイドさんに見送られ、中央の階段を上った。


背中にみんなの気配を感じる。


手汗が半端じゃない。


階段上るだけでこんなに緊張したの初めてだよ。


浅賀さんの背中をみつつ、ついついため息が零れた。


先行き不安だよ。