お嬢様になりました。

何処で見てるの?


なんでこんな事するの?


周りを確認したいけど、怖くて顔を上げられない。



「葵、大丈夫。 俺がいる」

「……っ」



玲の包み込むような柔らかい声に、今にも泣いてしまいそうだった。


誰かも分からないメールの相手に、脅された事もあった。


この事を誰かに話したら、大切な人が傷付くよって……だから誰にも話せなかった。


玲に知られたのもただの偶然。


メールを見て固まってしまっている時に、偶然携帯の画面を見られてしまったから。



「邪魔。 そんなとこに二人で突っ立ってんじゃねぇよ」



隆輝の声に体が強張った。


隆輝には知られたくない。



「通れるだろ」

「あ? って、これお前のだろ?」



床に落ちた携帯を隆輝が拾い上げ、私は慌てて携帯を奪い取った。



「おまッ……」

「ごめん……ごめん……っ」



口から咄嗟に出た言葉は『ごめん』だった。


何故かは自分でもよく分からない。


とにかく頭の中も心の中もグチャグチャだった。


居た堪れなくなった私は二人から逃げるように走った。


隆輝、メール見ちゃったかな?


見てないよね?


あいつが知ったら犯人捕まえる為に躍起になる。


そんな気がする。


隆輝にも危ない目にはあってほしくない。


視界がどんどんぼやけていく。


それでも足は止まらなかった。