お嬢様になりました。

「残念だけど、まぁ人生何が起きるか分からないから、楽しみにしてるわね」

「…………」



私は曖昧に笑う他、どうすればいいのか分からなかった。


私が仮の婚約者になる事で、隆輝が好きな人と結婚出来るならって……あの時はそんな気持ちで婚約者になりすます事を了承した。


今思えば、それは浅はかな考えだったと心から思う。


婚約者というのがどういうものなのか、分かっているようで分かっていなかったのかもしれない。



「葵」



名前を呼ばれ振り向くと、玲が立って居た。


気怠そうに見える雰囲気は、玲独特の色気なのかな。



「どうしたの? テレビ飽きちゃった?」



普段テレビ見ないって言ってたし、つまんなくなっちゃったのかな?


笑って尋ねても、玲はジーッと私を見つめるだけだった。



「玲?」

「……何でもない」

「何それ……」



玲はそれ以上何も言わずに、テレビ前のソファーへ戻っていった。


変なの。



「今日は息子の意外な一面をたくさん見られて、本当に楽しいわ。 葵ちゃんのおかげね」

「私のですか?」

「ふふっ、気にしないで」



佐和さんはそう言うと、直ぐに料理する手を再び動かした。