お嬢様になりました。

俺に首を掴まれたまま手を伸ばし、まだしがみつこうとしてくる。


俺がつかんでいるせいで、足を動かしているが全然前に進まない兄貴。



「いったぁぁぁいーッッ!!」



何処からともなく飛んできた雑誌が、見事に兄貴の頭に直撃した。


兄貴はしゃがみ込み頭を抱えている。



「ちょっと!! 今いいとこなんだから静かにしてちょうだい!!」



見ている番組がいいところだった様で、母さんがキレて雑誌をぶん投げた様だ。


母さんは怒鳴るだけ怒鳴って、また真剣にテレビを見始めた。


葵はテレビっ子だって言ってたけど、葵もテレビに集中してる時に邪魔されたら、ここまで激しく怒るんだろうか。


まだ痛がっている兄貴を放置し、俺は静かにソファーに腰掛けた。



「仕事だったのか?」

「違う」

「いい事でもあったのか?」

「どうして?」

「そんな顔してる」



そんな顔?


自分の顔に触れてみたが、よく分からなかった。



「仕事じゃなかったの!? どうして僕を誘ってくれなかったの!?」



さっきよりも声のボリュームを下げた兄貴が、俺の隣に腰掛けた。



「近い。 離れて」

「いいじゃないかっ。 僕たちは仲良し兄弟なんだよ!?」



同じ環境で育ったとは思えない程のこの暑苦しさ。


どうすればここまで人は暑苦しく育つんだ?