お嬢様になりました。

またか……。


葵は体を引くと、夜景に目を向け顔を背けた。



「サインくださぁいっ」



黒のペンと手帳やらノートを差し出す女ども。


少しは空気を読んでもらいたい。


俺は女どもを無視して立ち上がった。



「雑誌で見てるよりも背が高いんですねぇーっ」

「それに顔も小さぁいっ!!」



煩い。


香水臭い。


話し方がうざったい。



「えっ!?」



葵の腕を掴むと、顔を上げた葵が素っ頓狂な声を上げた。



「行くぞ」

「で、でもッ……」



戸惑う葵の腕を無理矢理引っ張り、レジで会計を済ませ、急いで店から出た。


当てもなく歩いてたどり着いた場所は、海沿いの広場だった。



「座ろう」

「う、うん」

「…………」

「…………」



ベンチに座った俺たちに暫しの沈黙が流れた。


時期が時期だからか、海風を浴びると少し体がベタつく。


それでも程よく吹く風は心地よかった。



「……良かったの?」

「何が?」

「さっきの子達……ファンなんじゃないの?」

「だったら何?」



瞳に戸惑いの色を見せる葵。



「はぁー……」



思わず溜息が漏れた。