お嬢様になりました。

「そう……」



そう答えるだけで精一杯だった。


葵の態度を見ている限り、海堂の事を好きだとは考えにくい。


でも婚約者になる事を決めたのは葵自身。


祖父に強要されたわけじゃない。


だったら葵は俺とのこの時間を、どう思って過ごしているんだろう。


窓ガラスに映る自分の顔が、やけに情けなく見えた。


夜景の煌びやかな景色とは裏腹に、俺の心は暗く淀んでいく。



「ごめん……」



沈んだ葵の声。


その声は更に俺の心を締め付けた。



「どうして謝るの?」

「そ、れは……」



目だけを葵に向けると、葵は泣くのを我慢するかの様に、噛み締めた唇を震わせていた。


こんな顔をさせたいわけじゃない。


そう思っていても、自分の感情を上手くコントロールする事が出来なかった。


笑って「葵のせいじゃない」と言ってあげられなかった。



「理由は言えない……自分でも後先考えずに、感情に流されちゃってッ決めちゃった事、反省ッして、るッッ」



険しい顔をした葵は、今にも泣いてしまいそうな程瞳を潤ませていた。


葵にこんな顔をさせているのは俺なのに、辛くて堪らなかった。



「すみませんっ!!」



葵の頬に手を伸ばした時、知らない女どもが声を掛けてきた。