お嬢様になりました。

一瞬だけ、玲の柔らかい唇がおでこに触れた。


顔を上げると、いつもよりも優美な笑みを浮かべた玲と視線が絡まった。



「れ……」

「お前今何したか分かってんのかッ!?」



玲の名前を呼ぼうとしたら、海堂の怒声に遮られてしまった。


海堂は玲の肩を掴み、玲を睨みつけていた。


なっ、すっごく周りから見られてない!?


ダンスホールのど真ん中だし、これじゃ注目の的だよっ!!


私一人が焦るばっかりで、二人は睨み合ったまま動こうとしない。


怒りの色をともした海堂の瞳とは反対に、玲の瞳はとても冷ややかだった。



「葵のおでこにキスした」

「今後こいつに近付くな」

「なっ、何言ってんの!?」

「お前は黙ってろ」



黙ってろって何よ!?


黙ってられないから口挟んだんじゃん!!



「お前にそんな事言う権利ないだろ」

「あるから言ってんだよ。 こいつは俺の婚約者だ。 お前が気安く触れていい女じゃねぇんだよ」

「ふーん、婚約者ね……葵はそうは思ってないんじゃないの?」



ッッ!?


へ!?


突然海堂にキッと睨まれ、私の体はガチッと固まってしまった。