お嬢様になりました。

「何も言わなくていい」

「え……?」



いつの間にか俯いてしまっていた私は、玲の言葉に弾かれる様に顔を上げた。



「事情は分からないけど、葵の気持ちは分かった」

「玲……」

「本当、嘘付けないよね」

「そんな事ないと思うんだけど……」

「そんな事あるよ。 その素直なところも葵のいいところだ。 俺はそんな葵が可愛くてしかたがない」



玲の存在も甘い言葉も心臓に悪い。


今となってはクールなイメージよりも、甘いイメージの方が強くなっている。


恥ずかしくて視線を逸らすと、その視線の先には不機嫌な顔をした海堂の姿があり、思いきり視線がぶつかった。


そうだ……。


私の為に食べ物取りにいってくれてたんだった。


一旦海堂のところに戻ろうと思った時、海堂の斜め後ろに立っている橘さんの姿が目に入った。


あんなに面倒臭そうな態度取ってたくせに一緒に居たんだ。


モヤモヤする感情が黒く変わっていく。



「気になる?」

「何も気にしてない。 それより、映画いつ行く?」

「来週の日曜日は?」

「大丈夫だよ」



何も気になってなんかない。


あいつの訳わかんない行動に腹が立ってるだけ。


別に私には関係のない事だけどね。