お嬢様になりました。

ーコンコンコンッ。


ノックの後に顔を見せたのは浅賀さんだった。



「海堂様が葵お嬢様のお迎えにいらしております」

「……え?」



迎えに?


私を?


何で?



「海堂の倅とパートナーで参加するんじゃったな」



確かに。


パートナーでどうとかってあいつ言ってたな。


しかたない。


ここでブーブー文句を言う訳にはいかないし、おとなしく玄関に向かおう。



「直ぐに行きます」



私はお祖父ちゃんと浅賀さんと一緒に部屋を出た。



「とてもよくお似合いです」

「あり、がとうございます」



部屋の外で待機して居た荒木さんに褒められ、恥ずかしいながらもお礼を言った。


着なれないドレスに履きなれない高いヒール。


だからかな。


ただ歩いているだけなのに、妙にドキドキする。


玄関に綺麗な姿勢で立っているタキシード姿の男性。


その姿があまりにも凛々しくて、私は息を飲んだ。



「宝生院会長、本日は葵さんをお借り致します」

「あぁ、宜しく頼む」



海堂はお祖父ちゃんに頭を下げると、私に目を向けた。



「ほら、行くぞ」

「あ、うん」



わざと開けられた海堂の右脇に腕を通し、迷っている指先で海堂の腕を軽く握った。


いつもと雰囲気が違うからなのか、緊張のあまり海堂の顔を見る事が出来なかった。