お嬢様になりました。

胸元に玲の顔が近付き、ギュッと目を瞑った。


……あれ?


何も起こらない……。


ゆっくり目を開けると、玲は眉尻を下げ切ない笑みを浮かべていた。



「ごめん。 また怖い思いをさせるところだった」

「玲……」



玲は肌けた私のブラウスを綺麗に整えてくれた。


玲の優しさが胸に触れ、熱いものがこみ上げてくる。


ついこの間までいつだって、私の気持ちなんて御構い無しに、抱きしめたりキスしてきたりしてきてたくせに。


玲はきっと私なんかより経験豊富で、女の子の気持ちだってよく分かってると思う。


普段からこんな調子なのかな?


そうじゃなくて……。



「葵」

「な、に?」



玲の熱い視線を浴びて、体の熱がどんどん上がっていく。


のぼせちゃいそう。


玲の指が私の顎のラインをなぞり、顎先で動きを止めた。


親指の腹が唇に触れ、まるで焦らされているかの様な感覚に襲われる。



「いい?」

「…………」



玲が可愛くて思わず口元が綻んだ。


私は何も言わずに目を閉じた。


唇に柔らかいものが触れ、全身の力が抜けていく。


……私だけが特別ならいいのに。


玲の特別ならいいのに……。