お嬢様になりました。

「葵から抱きついてきたの、初めてだな」



玲の言葉で高ぶった感情が一気に引いていった。


私、何した?



「ご、ごめんッッ」



慌てて玲から体を離した。


恥ずかしくて顔があげられない……。



「久しぶりのゆでダコ」



そんな事言われたら余計恥ずかしいじゃんっ!!


顔を隠すように両手で頬を包み込むと、体温が掌に伝わってきた。


熱い……。



「どうする?」

「え?」



顔をあげるとすぐさま玲と視線がぶつかった。


どうするって?



「お祝い、何する?」



あっ、そうだ!!


そうだった!!


さっきまで覚えてたのに、もう忘れてた。



「映画観に行きたいっ」

「映画?」

「観たい映画があるんだけど、ダメかな?」

「いいよ。 行こう」



緊張がゆっくりと解けていく。


映画なんていつぶりかな。


お父さんとお母さんと三人で観に行ったのが最後かもしれない。



「あっ、そうだ」



私は鞄からラッピングした袋を取り出し、玲に差し出した。



「これ何?」

「お礼にと思ってブラウニー焼いたの。 こう見えて料理だけは得意なんだ。 今日会えて良かった」