お嬢様になりました。

頭を抱えて落ち込んでいると、横で音がした。



「……玲?」

「名前、覚えてたんだ」



玲は私の隣に腰を下ろすと、すらっと伸びたしなやかな足を組み、頬杖をつき私の顔を覗き見た。


何故だか、一度この人の目を見ると中々視線を外せない。


不思議な人。



「教えてやるよ」

「でも……」

「このままだと赤点確実」



確かに……。


ここまで出来ないと、先生に聞きに行くのもちょっと恥ずかしい。



「数学以外、何が苦手なの?」

「……全部」



玲は目を丸くすると、フワッと柔らかな笑みを見せた。


この人の笑顔は私の胸をドキドキさせる。


まるで魔法みたい。



「じゃあ全部だな」

「えっ!?」

「驚く事じゃないだろ」



いや、驚くよ。


だってこの間初めて会った女に、まさかそこまで親切にしてくれるとは思わないよ。


変な人だけど、実はいい人なのかな?



「ありがとう」

「お礼は、葵でいい」



前言撤回。


やっぱり変な人。


玲のクールで冷たい第一印象も、二回目にして崩れつつあった。